オーストラリアの大学に在学中、夏休みに日本へ一時帰国した19歳のとき、父の友人のギャラリーでアルバイトをさせていただきました。日本の陶芸を扱うギャラリーでしたが、当時の自分にはまったく良さがわからず、「なぜこんな地味なものに、みんなお金を出すのだろう」と不思議に思っていたことが懐かしく思い出されます。
お小遣い稼ぎのつもりで勤めていたある日、オーナーの方から「ウェブサイトに掲載するために、作品の写真を撮ってほしい」と頼まれ、撮影を担当することになりました。作品を撮影台に並べ、ファインダーを覗いて角度を確かめながらシャッターを押す。なんということのない単純な作業を繰り返すうちに、「どうすればもっと魅力的な写真が撮れるのだろう」と、少しずつ角度を変え、照明の位置を変え、試行錯誤を続ける日々が始まりました。
そしてある日、陶芸にまったく興味がなかったはずの自分が、突然「なんて美しいのだろう」と心を打たれた瞬間がありました。一見すると茶色く地味な作品なのに、よく見ると絶妙な焼き色や美しいシルエットがあり、作家の意図や、日本の美意識に触れた瞬間でした。
多くの中小企業も、同じではないでしょうか。
一見しただけではわからない、その企業ならではの魅力や深み。創業者をはじめ、社員の皆様が紡いできた歴史。近づいて、よく見て、考えて、対話して、はじめて気づくことのできる価値。決算書や数字だけではわからない価値を見つけること、磨くこと、伸ばすことが、自分の使命だと思っています。
私のキャリアを一言で振り返ると、日本の中小企業の成長と仕組み化の支援に集約されます。銀行などの金融出身でも、投資家でも、コンサルティング会社出身でもなく、あくまでも中小企業の中で、会社の発展に貢献してきました。日本の伝統に根ざした現代アートを世界に広めるアートの仕事から、海外へ羽ばたく日本人のための英語教育の仕事まで。わずか数名の社員しかいない環境で、マーケティングから戦略策定、事業運営、IT導入、海外進出まで、地道かつ大胆に、泥臭く、そして華やかに、一つひとつの仕事を積み上げてきました。
中小企業は可能性の宝庫です。やればやるほど伸ばすことができると確信しています。それは、15年以上、毎年会社を成長させてきたという実績にも裏付けられています。
いま、日本の中小企業の約半数(50.8%)は後継者が決まっていません。国の相談窓口に寄せられる事業承継の新規相談は年間2万4千件を超え、過去最多を更新し続けています。多くの会社が、大きな岐路に立っています。
アーティストが制作に集中できる仕組み。教師が授業に専念できる仕組み。社会には、その人にしかできない仕事を持つ人がいます。振り返ると、自分の仕事は、そうした方々が得意分野に集中できるよう、周りの仕組みを整えることでした。
支援の質を保ち、高めること。そのために、知識と能力を磨き続け、一つひとつの業務を適正に進めること。それが、会社の未来をお預かりする者の責任だと考えています。
大切な価値を、次代に繋ぐ架け橋になること。それが、アークラインの存在意義です。
株式会社アークライン
代表取締役 マクマーン 蓮